2026年1月に調査した最新論文の中で個人的に興味深かった論文を以下に紹介する。
Regrowth-Free GaN RF HEMTs Achieving fmax of 403 GHz via Periodic Contact Structures
Mohammad Rezaei, Hongkeng Zhu, Amirhossein Esteghamat, Elison Matioli
École Polytechnique Fédérale de Lausanne (EPFL)(Switzerland)
IEEE Electron Device Letters, vol. 47, no. 1, pp. 37-40, Jan. 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/LED.2025.3633055
[要旨]
複雑な「再成長」工程を必要とせずに、サブテラヘルツ帯で動作する高周波GaN HEMT(ゲート長45 nm)を開発した。「周期的サイドコンタクト (PSC)」という新しい電極構造により、0.15 Ωmmという極めて低いコンタクト抵抗を実現した。金を使わない低温処理(Ti/Al, 500℃)により、世界最高水準の性能(fmax=403 GHz)を達成した。
[従来研究との新規性]
再成長工程を使わないGaN HEMTにおいて、最大発振周波数(fmax)が400 GHzを超える性能を示した。
特殊な装置を要する再成長デバイスに匹敵する性能を、標準的な電極蒸着と低温熱処理だけで実現した。
周波数が高くなるほどコンタクト抵抗がさらに低下する特性(√(1/ω)に比例)を確認した。
Thermal Optimization of the Buffer Layer Thickness of GaN HEMTs
Anwarul Karim, Husam Walwil, Kyuhwe Kang, Seokjun Kim, Daniel C. Shoemaker, Heather Barton, Kyoung-Keun Lee, James S. Tweedie, Sukwon Choi
The Pennsylvania State University (USA)
Macom Technology Solutions (USA)
IEEE Transactions on Electron Devices, vol. 73, no. 1, pp. 164-171, Jan. 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/TED.2025.3636105
[要旨]
窒化ガリウム(GaN)トランジスタの熱抵抗を最小にするために、土台となるバッファ層の最適な厚さを調査した。厚さだけでなく、熱が伝わる方向(異方性)、温度、界面熱抵抗(TBR)、および動作時の電圧状態(バイアス)をすべて考慮した精密なモデルを構築した。条件によって最適な厚さは異なり、特定の条件下ではバッファ層を厚くした方が逆に冷えやすくなるという、従来の単純な考え方とは異なる結果を得た。
[従来研究との新規性]
バッファ層の厚さによる影響が、温度や結晶方向、さらにはデバイスの電気的な動作状態によって逆転することを定量的かつシミュレーションと実験の両面から証明した点。
「薄いほうが有利」という従来の定説を覆し、用途に応じた「最適な厚さ」を設計するための指針を提示した。
Laser-Enhanced Direct Print Additive Manufacturing (LE-DPAM) for Low-Loss, Low-Parasitic Heterogeneous Integration of MMICs
Ruoke Liu, Di Lan, Ramiro A. Ramirez, Benjamin Reams, Liguan Li, Thomas Weller, Jing Wang
University of South Florida (USA)
IEEE Transactions on Components, Packaging and Manufacturing Technology, vol. 15, no. 12, pp. 2766-2775, Dec. 2025
DOI:https://doi.org/10.1109/TCPMT.2025.3610268
[要旨]
3Dプリンタとレーザー加工を組み合わせた新しい製造法「LE-DPAM」を開発し、高周波回路(MMIC)を低損失でパッケージ化することに成功した。従来のワイヤボンディングの代わりに、3Dプリントした樹脂基板(ABS)の溝にチップを埋め込み、銀インクで直接配線をつなぐ手法を採用した。これにより30GHzまでの高い周波数帯でも電気信号の劣化や反射を極めて低く抑えられることを実証した。
[従来研究との新規性]
3Dプリント、銀インク描画、レーザー加工の3つを統合した「ハイブリッドプロセス」により、これまでに報告された他のプリンテッドインターコネクトよりも20GHzにおいて0.13 dB/mm以上低い損失を達成した。
異なる種類のチップ(GaAsチップなど)や電子部品(SMTコンデンサ)を、一つの基板上にシームレスに混載できる「異種統合」の柔軟性と高い再現性を示した。
W-Band High-Gain High-Efficiency Antenna Array in Glass Package Based on Low-Loss BGA-Formed AFSIW Feeding Network
Ding Wang, Yong Fan, Yu Jian Cheng
University of Electronic Science and Technology of China (China)
IEEE Transactions on Components, Packaging and Manufacturing Technology, vol. 16, no. 1, pp. 157-165, Jan. 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/TCPMT.2025.3584756
[要旨]
W帯(80〜110 GHz)で動作する、16×16要素の高効率アンテナアレイを開発した。ガラス基板とBGA(ボール・グリッド・アレイ)技術を組み合わせ、「空気充填基板集積導波路(air-filled substrate integrated waveguide, AFSIW)」という低損失な信号経路を構築した。100 GHzで31.5 dBiのピーク利得と75.8%という高い放射効率を達成し、小型化と高性能化を両立した。
[従来研究との新規性]
ガラスパッケージ技術とBGAプロセスを利用してAFSIWを形成し、W帯で最高クラスの利得と効率を実現した点。
2.5D集積(チップとアンテナを同一基板上に並べる技術)に適した構造であり、将来の超小型・高解像度ミリ波システムの実現に寄与する点。
Waveguiding Approach to Via Design with Bandwidth over 120 GHz
Yuriy Shlepnev, Alex Manukovsky
Simberian Inc. (USA)
Intel (USA)
2025 IEEE 34th Conference on Electrical Performance of Electronic Packaging and Systems (EPEPS), Milpitas, CA, USA, 2025, pp. 1-3
DOI:https://doi.org/10.1109/EPEPS63858.2025.11346599
[要旨]
次世代の超高速通信(最大448 Gbps)に対応するため、120 GHz以上の広い帯域を持つ新しいプリント基板ビア(層間をつなぐ垂直な配線)の設計手法を提案した。ビアを単なる穴ではなく、基板内に組み込まれた「同軸導波路(substrate-integrated coaxial waveguide, SICW)」や「ツインアックス導波路(substrate-integrated twinax waveguide, SITW)」として設計することで、製造誤差に強く安定した性能を実現した 。
[従来研究との新規性]
基板集積導波路(SIW)の概念を、単なる回路素子としてではなく、層間接続用の「ビアスタック全体」の設計指針として適用した点。
製造工程の不確実性を設計段階で織り込み、120 GHzを超える超広帯域において、実用的な「どの基板構成でも使える(any-stackup)」ビア設計手法を確立した点。
Integrated Circuit-on-Glass (ICoG): A Self-Packaged 3D-Heterogeneous Integration (3DHI) Platform for Millimeter-Wave Circuits With Embedded GaN-on-Si Dielets
Pradyot Yadav, Xingchen Li, Tomás Palacios, Madhavan Swaminathan
Massachusetts Institute of Technology (USA)
Georgia Institute of Technology (USA)
Pennsylvania State University (USA)
IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, vol. 74, no. 1, pp. 63-72, Jan. 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/TMTT.2025.3627479
[要旨]
高性能な窒化ガリウム(GaN)の微小なチップ(ダイレット)を、直接ガラス基板の中に埋め込む新しい製造技術「ICoG」を提案した。この技術を用いて、次世代通信(5G/6G)で使われる高い周波数帯(28GHz帯および10GHz帯)で動作する増幅器を試作し、その有効性を実証した。
[進化点]
ニュースレター202507で紹介した論文(RFIC 2025)の実験的な試作段階から理論に基づいた高精度な製造プラットフォームへ進化。主な進化点は以下の4点。
1. 設計精度の向上(モデリングの確立)
ガラス基板に埋め込むことで生じる寄生容量を詳細に数値化し、それを含めた正確なデバイスモデルを構築することにより、設計値と実測値のズレが大幅に改善。
2. 回路構成の多様化と複雑化
28GHz帯(5G FR2向け)と10GHz帯(高線形性向け)という、異なる特性を持つ2種類の増幅器を設計・検証し、プラットフォームとしての汎用性を示した。
3. 製造技術の洗練(ICoGプラットフォーム化)
ICoG (Integrated Circuit-on-Glass)という名称で、パッケージそのものを回路の配線層(BEOL)として活用するシステムとして体系化された。特に、Au-free GaNプロセスとの統合がより強固に。
4. 性能データの詳細化
10GHz帯において、高い電力付加効率(32.4%)や優れたリニアリティなど、次世代通信規格(5G NR)の要求仕様に耐えうる詳細なデータを示し、実用への道筋が明確に。
Co-Design of Thermal and RF Performance in a Stacked Sub-THz Antenna-in-Package With Embedded Endfire Arrays
Ryosuke Hasaba, Akihiro Egami, Kenichi Okada 他
Panasonic Industry Company Ltd. (Japan)
Panasonic System Networks, Research and Development Laboratory Company Ltd., (Japan)
Institute of Science Tokyo (Japan)
Shinko Electric Industries Company Ltd. (Japan)
National Institute of Information and Communications Technology (Japan)
IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, vol. 74, no. 1, pp. 547-559, Jan. 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/TMTT.2025.3619939
[要旨]
第6世代移動通信システム(6G)向けの100GHzを超える超高周波帯(サブテラヘルツ帯)において、熱対策と通信性能を両立したアンテナ一体型パッケージ(AiP)を開発した。アンテナを基板の端から放射させる構造(エンドファイア型)にすることで、通信チップからの放熱経路を確保し、高い安定性と性能を実証した 。
[進化点]
ニュースレター202508で紹介した論文(IMS 2025)の熱に強い積層AiPというコンセプトが、理論的に裏付けられた、6Gのための完成された設計プラットフォームへと進化。主な進化点は以下の4点。
1. 「熱と高周波の協調設計」プロセスの体系化
熱性能と高周波(RF)性能を切り離すのではなく、両者を同時に最適化する協調設計(Co-Design)手法を確立。特に、モジュール間の隙間が熱と電波の双方にどう影響するかを理論的に解明。
2. 熱解析モデルの高度化と精密化
熱モデルをさらに精緻化し、チップのジャンクション温度の変化がRF回路の出力や利得に与える具体的な影響を定量化した。これにより、実際の運用環境での性能低下を予測。
3. アンテナアレイ構造と性能の詳細な解析
157GHz帯周辺でのより詳細な周波数特性、放射効率、および複数のAiPを積層した際の相互干渉やサイドローブの抑制について、より深い理論的考察を追加。
4. 6G実用化に向けたシステム指針の提示
サブテラヘルツ帯デバイスの課題である高密度実装による発熱に対し、エンドファイア型アンテナが放熱経路(ヒートシンクの配置)をいかに自由にできるかという実用上の優位性を、実証データと共に強く主張。
※なお、翻訳・要約にはGeminiアプリを活用した。