2026年3月に調査した最新論文の中で個人的に興味深かった論文を以下に紹介する。
20.6 A 330-to-344GHz GaN Power Amplifier with Maximum-Available-Gain-Boosting Technique and Compact Tandem Coupler Achieving 86mW Output Power at 340GHz
Weibo Wang, Wenhua Chen, Kenan Xie, Chenjie Luo, Yibin Zhang, Dechun Shang, Ziwei Jiang, Guodong Yu, Yan Chen, Keping Wang
National Key Laboratory of Solid-State Microwave Devices and Circuits, Nanjing Electronic Device Institute, Tsinghua University, Tianjin University (China)
2026 IEEE International Solid-State Circuits Conference (ISSCC), San Francisco, CA, USA, 2026, pp. 350-352
DOI:https://doi.org/10.1109/ISSCC49663.2026.11409192
[要旨]
非常に高い周波数(340GHz帯)で動作する、世界最高水準の出力を持つGaN(窒化ガリウム)パワーアンプを開発した。「MAGブースティング」という新手法で増幅性能を向上させ、「タンデムカプラ」という部品で電力合成のロスを減らした。340GHzにおいて、従来の記録を大きく塗り替える 86mW (19.3dBm)の飽和出力を実証した。
[従来研究との新規性]
35nm微細プロセス: 非常に短いゲート(35nm)と、電子を閉じ込めるAlGaNバックバリア構造を採用。
テラヘルツに近い周波数帯において、GaNデバイスの潜在能力を回路工夫(ブースティング技術とカプラ設計)で最大限に引き出し、出力記録を大幅に更新した点。
CMOS等で使われる複雑な技術に頼らず、単純かつ効果的な構造で高利得・高出力を両立させた点。
β–Ga₂O₃ Sub-Micron FinFETs With Si Delta-Doped Channel Modulating >3 × 1013 cm–2 Charge Density
Nabasindhu Das, Ankita Kashyap, Advait Gilankar, Trevor Thornton, Nidhin Kurian Kalarickal, Cameron Gorsak, Pushpanshu Tripathi, Salil A. Paranjape, Hari Nair
Arizona State University, Cornell University(USA)
IEEE Electron Device Letters, vol. 47, no. 3, pp. 466-469, March 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/LED.2026.3656173
[要旨]
高出力・高周波動作に適した酸化ガリウム(β-Ga2O3)トランジスタにおいて、特殊な添加技術(デルタドープ)と立体構造(FinFET)を組み合わせたデバイスを開発した。非常に高い電子密度(3.3×10^13 cm-2)をナノ単位の細いフィンで制御することで、優れたスイッチ性能(高いON/OFF比)と高周波特性(3.8 GHz)を実証した。
[従来研究との新規性]
これまでの手法では難しかった「超高電子密度」と「三次元FinFET構造」を融合させ、高周波酸化ガリウムデバイスとして世界トップクラスの性能バランスを実現した点。ゲート長0.9 µmにてON/OFF比=10^8~10^9、fT=3.8 GHz、耐圧>200 V。
デルタドープの厚みを8.2 nmという原子レベルの精度で制御し、高い導電性と制御性を両立させた点。
Analysis of Heat Diffusion in GaN/3C-SiC/Diamond HEMTs for Design Optimization
X. Zheng, J. W. Pomeroy, P. Kachhawa, J. Liang, N. Shigekawa and M. Kuball
University of Bristol(UK), Osaka City University(Japan)
IEEE Transactions on Electron Devices, vol. 73, no. 3, pp. 1705-1710, March 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/TED.2025.3649191
[要旨]
高出力デバイスの究極の放熱基板として期待されるダイヤモンドを用いたGaNトランジスタにおいて、その内部の熱の流れを精密に測定・分析した。新しい測定手法(ns-TTR)により、デバイス内部の各層の熱の伝わりやすさを直接測定することに成功した。シミュレーションと実測を組み合わせ、熱を効率よく逃がすための最適なGaN層の厚さや中間層(3C-SiC)の条件を明らかにした。
[従来研究との新規性]
従来の材料単体での測定ではなく、実際に動作する完成したデバイス構造のままで、深部の熱特性を非破壊かつ正確に測定した点。
理論値ではなく、製造工程を経て変化した「実物の物性値」に基づいた最適設計指針(厚さのトレードオフ範囲)を初めて提示した点。単純に「GaN層を薄くすれば熱が逃げやすくなる」というわけではなく、使用する積層構造や材料特性に合わせて、横方向の熱拡散と垂直方向の距離のバランスを取る設計(3~5 µm付近)が最も効率的な放熱を可能にする。
Pressure-Bonding of GaN-HEMT Die to Graphite Carbon for heat dissipation
Kumamoto University(Japan)
Koji Aramaki, Akio Wakejima
2025 IEEE Electrical Design of Advanced Packaging and Systems (EDAPS), Hokkaido, Japan, 2025, pp. 1-4
DOI:https://doi.org/10.1109/EDAPS66187.2025.11411749
[要旨]
高出力なGaNトランジスタの熱を逃がすため、安価で加工しやすい「グラファイトカーボン」を放熱板として利用し、接着剤やハンダを使わずに直接押し付けてくっつける「加圧接合」技術を開発した。金(Au)メッキの工夫と精密な圧力制御により、従来のハンダ付けよりも低い温度上昇で動作させることに成功した。
[従来研究との新規性]
放熱性に優れたグラファイトカーボンに対し、熱伝導を妨げる接着層(ハンダ等)を一切排除し、「金メッキ+加圧」のみで実用的な熱特性を達成した点。
パッケージの形状に左右されず、かつ安価な材料とプロセスで高性能な冷却構造を構築できる可能性を示した点。
GaN-based MIS HEMT with SiAlN gate dielectric achieving over 70% PAE and 10 Wmm-1 at 8 GHz
Yuichi Minoura, Atsushi Yamada, Kenji Saito, Norikazu Nakamura, and Toshihiro Ohki
Fujitsu (Japan)
Applied Physics Express, 19, 021010 (2026)
DOI:https://doi.org/10.35848/1882-0786/ae428a
[要旨]
ゲート絶縁膜に新材料「SiAlN」を採用したGaN MIS HEMTを開発し、8 GHz帯において世界最高水準の電力付加効率(PAE)71.4%と出力電力密度 10.4 W/mm を同時に達成した。
[従来研究との新規性]
高周波(Xバンド)において「PAE > 70%」と「出力 > 10 W/mm」を両立させた世界初のGaN MIS HEMTである点。
MOCVDによるSiAlNその場堆積技術により、界面トラップによる性能劣化を極限まで排除した点。
Design, Fabrication, and Characterization of an Air Dielectric Semi-Coaxial Line
Aamir Saud Khan, Vikram Maharshi, Pranav Kumar Shrivastava, and Bhaskar Mitra
Indian Institute of Technology Delhi (India), Micron Technology Sanand (India), Form Factor Inc.(Germany)
IEEE Transactions on Components, Packaging and Manufacturing Technology, Vol.16, No. 3, March 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/TCPMT.2025.3622059
[要旨]
100 GHzまでの高周波帯で動作する、空気を用いた「半同軸構造」の新しい伝送線路(SCTL)を開発した。シンプルな表面マイクロマシニング技術により、絶縁体による電気のロスを劇的に抑えつつ、機械的な強さを両立させた。
[従来研究との新規性]
SU-8という樹脂を芯材とし、その三面を厚い銅のシールドで包み込む構造を採用。さらにその外側を空気の空洞で覆う「半同軸(セミ・コアキシャル)」形状を、4段階の光加工(リソグラフィ)とメッキ、エッチングを組み合わせたプロセスで作製。複雑な層を積み重ねる市販の3D微細加工プロセス(Polystrata等)に頼らず、標準的な半導体製造装置(CMOS互換)のみで作製できる点。
従来の完全な同軸構造に匹敵する性能を、より単純かつ頑丈な構造で実現した点が画期的である。30 GHzで 0.13 dB/mm、97.5 GHzで 0.42 dB/mm という低い減衰率(信号の劣化)。実効比誘電率は 1.88 と非常に低く、理想的な空気絶縁(比誘電率 1)に近い性能。
※なお、翻訳・要約にはGeminiアプリを活用した。