2026年4月に調査した最新論文の中で個人的に興味深かった論文を以下に紹介する。
11.7 W/mm Continuous Wave Output Power in X-Band AlN-Buffer HEMTs
R. Chaudhuri et al.
Soctera Inc., Trinix Technologies LLC(USA)
IEEE Electron Device Letters, vol. 47, no. 4, pp. 680-683, April 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/LED.2026.3659173
本件は、ニュースレター202602 にて紹介した論文(2025 IEDM)に類似しているが、連続波(CW)動作とパルス動作に違いがある。
[要旨]
従来のGaN(窒化ガリウム)バッファに代わり、熱伝導率の高いAlN(窒化アルミニウム)バッファを採用したHEMT(高電子移動度トランジスタ)を開発した。Xバンド(10 GHz)において、CW出力電力密度として従来の記録を2倍に更新する11.7 W/mmを達成した。この成果は、AlNバッファHEMTの高い放熱性と耐圧性が、次世代の商用・防衛用通信システムに極めて有効であることを示している。
[従来研究との新規性]
AlNバッファの熱抵抗は5.5 m2K/GWであり、標準的なGaNバッファ(14.4 m2K/GW)と比較して約3倍の改善を確認した。(改善効果は以前紹介した論文と同程度)
AlNバッファHEMTにおけるCW出力電力の世界記録を約2倍(~6 W/mm → 11.7 W/mm)に引き上げた。
特殊なパルス動作ではなく、中断のない通信に不可欠なCW動作において、従来のGaN HEMTに匹敵する性能を実証した点に大きな価値がある。
A 142–164-GHz Phased-Array AiP Module With High-Power-Density and High-Efficiency Transceiver in 65-nm CMOS for 6G UE
Y. Yamazaki et al.
Institute of Science Tokyo, Panasonic Industry Company Ltd., Shinko Electric Industries Company Ltd., National Institute of Information and Communications Technology(NICT)(Japan)
IEEE Journal of Solid-State Circuits, vol. 61, no. 4, pp. 1275-1293, April 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/JSSC.2026.3665184
本件は、ニュースレター202601にて紹介した論文(IEEE TMTT 2026, pp. 547-559)からエンドファイア型アンテナが進化している。
[要旨]
第6世代移動通信システム(6G)の利用者端末(UE)向けに、Dバンド(110–170GHz)で動作する小型・低消費電力なフェーズドアレイ・トランシーバを開発した。独自の注入同期型3逓倍フェーズシフタ(ILTPS)を導入することで、回路面積と消費電力を大幅に削減した。8素子のアンテナパッケージ(AiP)モジュールを構築し、142–164GHzの広帯域で、最大56Gbpsの高速通信と25.7dBmの等価等方輻射電力(EIRP)を実証した。
[従来研究との新規性]
基地局向けではなく、端末(UE)への搭載を明確にターゲットとした世界初のDバンドフェーズドアレイ・トランシーバ。
波長の半分である0.95 mm間隔で配置されたエンドファイア型基板集積導波路(SIW)アンテナ8素子を採用。低い反射損失(S11 < -10 dB)と高いアンテナ利得(12 dBi以上)を両立。
アンテナ面積あたりの輻射電力(EIRP密度)が、従来のDバンド報告例と比較して5倍以上向上。
従来は別々のブロックだった周波数変換・位相制御・増幅を極めて高密度に統合し、65nmという汎用的なプロセスで最高クラスの性能を引き出した点が画期的。
D-Band Substrate Integrated Waveguide-Fed Endfire Antenna Array in Ultrathin Glass Interposer
L. N. Vijay Kumar, X. Li, V. Smet, K. -S. Moon and M. Swaminathan
Georgia Institute of Technology, Pennsylvania State University(USA)
IEEE Transactions on Components, Packaging and Manufacturing Technology, vol. 16, no. 4, pp. 837-847, April 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/TCPMT.2026.3672674
[要旨]
次世代通信(6G)向けに、100μmの極薄ガラス基板を用いたDバンド(110-170GHz)対応のアンテナパッケージ(AiP)を開発した。基板集積導波路(SIW)で給電するビバルディアンテナをアレイ化し、小型ながら高い指向性と利得を実現した。4素子アレイで12.9dBi、8素子アレイで14.5dBiの最大利得を測定し、6G用デバイスへの適用可能性を示した。
[従来研究との新規性]
Dバンドにおいて、厚さわずか130μm(フィルム含む)という極薄なガラスパッケージにエンドファイア型アンテナを統合した例は珍しい。
3段階のレーザー照射とデテーパリング(テーパ緩和)技術により、ガラス内に理想的なSIW構造を形成する独自のプロセスを確立した。
外付けコネクタに頼らず、ダイオードを実装して3-D放射パターンを定量的かつ高解像度に測定する手法を実証した。
Embedded High-Power RF Chips in Glass Core Package
X. Li, X. Jia, K. -S. Moon, S. Warren, A. Ketterson and M. Swaminathan
Georgia Institute of Technology, Pennsylvania State University, Qorvo Inc.(USA)
IEEE Transactions on Components, Packaging and Manufacturing Technology, vol. 16, no. 4, pp. 693-702, April 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/TCPMT.2026.3667950
本件は、ニュースレター202507 にて紹介した論文(2025 RFIC)のGaNトランジスタレベルの埋め込みから高出力パワーアンプの埋め込みへと進化している。
[要旨]
22.5Wという大電力で動作する窒化ガリウム(GaN)の電力増幅器チップを、厚さ100μmのガラス基板の中に埋め込む(エンベデッド)新しいパッケージ技術を開発した。チップを基板の内側に入れることで配線を短くして電気的なロスを減らしつつ、裏面に銅製の放熱板を直結することで、大電力チップ特有の激しい発熱を効率よく逃がすことに成功した。
[従来研究との新規性]
大電力への初適用: これまで数ワット程度の小信号チップに限られていたガラス埋め込み技術を、20Wを超える大電力パワーチップに初めて適用し、その実用性を証明した点。
100μmという極薄のガラスコアを使い、チップ裏面から基板底面の銅製ヒートスプレッダへ熱を最短で引き抜く構造を、高精度なレーザー加工で実現した点。
Thermal Characterization of 650 V GaN HEMTs on 200 mm Engineered Substrates
Z. Chen et al.
University of Bristol(UK)
University of Illinois Urbana–Champaign(USA)
imec, Ghent University(Belgium)
IEEE Electron Device Letters, vol. 47, no. 4, pp. 676-679, April 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/LED.2026.3666882
[要旨]
独自のQST®基板(エンジニアード基板)上で作製された650 V耐圧GaN HEMTの熱性能を包括的に評価した。マイクロラマン分光法を用いた実測と熱シミュレーションを組み合わせ、デバイスの熱抵抗に影響を与える主要因を特定した。QST®基板はGaNに極めて近い熱膨張特性を持ちつつ、標準的なシリコン(Si)基板ベースのデバイスよりも優れた放熱特性を示すことを明らかにした。
[従来研究との新規性]
これまで小規模な実験に限られていたエンジニアード基板(QST®)の熱特性を、実用レベルの200 mmウェハ・650 V耐圧デバイスで初めて詳細に数値化した。QST®基板上のGaN HEMTは、Si基板上の同等デバイスと比較して、熱抵抗が約15~20%低い(放熱性に優れる)ことが示された。
複雑な多層構造を持つ基板において、どの層の接続部分が熱を遮断しているかを、ラマン測定と精密シミュレーションの併用により高精度に分離・特定した点。基板材料をPoly-AlNに変えるだけでなく、GaN成長の初期段階で生じる界面付近の結晶欠陥などを抑えて界面熱抵抗(TBR)を下げることが、シリコン基板の限界を超えるためには重要。
※なお、翻訳・要約にはGeminiアプリを活用した。