2026年5月に調査した最新論文の中で個人的に興味深かった論文を以下に紹介する。
A Wideband D-Band Microbump Antenna With Self-Packaged Design
J. Ding, W. Xu and Y. P. Zhang
Shanghai Jiao Tong University (China), Nanyang Technological University (Singapore)
IEEE Transactions on Components, Packaging and Manufacturing Technology, vol. 16, no. 5, pp. 1099-1108, May 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/TCPMT.2025.3647866
[要旨]
6G通信などの超高周波用途向けに、Dバンド(110–170 GHz)で動作する「自己パッケージ設計」を備えた広帯域・高効率なスロット結合型マイクロバンプ(極小突起)アンテナを開発した。安価であるもののミリ波帯では信号損失が大きいとされるFR-4(ガラスエポキシ)基板を使用しながらも、独自の構造設計により優れた帯域幅と放射効率を両立した。
[従来研究との新規性]
FR-4基板でのDバンド高性能化: 従来、Dバンドでは使用不可能と諦められていた安価なFR-4基板を用いながら、最大アンテナ利得8.54 dBi、超広帯域化(42.8%)を達成した点。
マイクロバンプの双極子効果の活用: 2つの微小な金属バンプを「電気双極子」として積極的にアンテナの共振メカニズム(スロットの磁気応答との結合)に取り込み、帯域幅を劇的に広げるという新しい動作原理を確立した点。
Integrated Branch-Line Coupler With Blind Vias on Silicon Interposer for RF System-in-Packages
J. -W. Tian, Z. -C. Zhu, X. -P. Chen and L. -S. Wu
Shanghai Jiao Tong University (China)
IEEE Transactions on Components, Packaging and Manufacturing Technology, vol. 16, no. 5, pp. 1090-1098, May 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/TCPMT.2025.3647484
[要旨]
スマートフォン等の無線通信機器において、電波を均等に分けたり集めたりする重要な受動部品「ブランチラインカプラ(方向性結合器)」を、シリコン基板(インターポーザ)上に従来の約4分の1の極小サイズで製造する新技術を開発した。基板を貫通させず途中で止める「行き止まりの微細な金属穴(ブラインドシリコンビア:BSV)」を回路の配線に組み込むことで、電気を蓄える「コンデンサ」の役割を持たせ、回路全体の長さを劇的に短縮(小型化)することに成功した。
[従来研究との新規性]
位置合わせの要らない画期的な異層エッチング: 貫通ビア(TSV)とブラインドビア(BSV)という、深さの全く異なる微細構造を、完全に1回の工程(シングル・パターニング)で同時形成し、製造コストの削減と位置精度の大幅な向上を両立させた点。
BSVのコンデンサ特性のミリ波応用: これまで単なる配線の補助として部分的に使われていた盲穴構造を、カプラの「サイズを1/4にするための主役(集中定数素子)」として理論化し、30 GHzという高周波の第一線で実証した点。
High-Performance Packaging of RF/mm-Wave Chiplets With 3-D Stitch-Chips (3DSCs)
S. Oh et al.,
Georgia Institute of Technology (USA)
IEEE Transactions on Components, Packaging and Manufacturing Technology, vol. 16, no. 5, pp. 1205-1207, May 2026
DOI:https://doi.org/10.1109/TCPMT.2026.3676787
本件は、ニュースレター202508にて紹介した論文(IEEE TCPMT, vol. 15, no. 8, pp. 1652-1660, Aug. 2025)の「高さが同じ2つのチップを石英ステッチチップで横に繋ぐ技術」から「大きな段差のあるチップとパッケージの大きな段差をシリコン貫通ビア(TSV)チップと石英ステッチチップで繋ぐ技術」へと進化している。
[要旨]
異なる種類の半導体チップ(チプレット)を組み合わせて1つの高周波(RF)ミリ波モジュールを作るための、新しい高密度3次元接続技術「3-Dステッチチップ(3DSC)」を開発・実証した。24–40 GHz(Kaバンド帯)で動作する低雑音増幅器(LNA)チップをこの3DSC技術を用いて実装し、従来の一般的な接続方法であるワイヤボンディングと比較して、極めてロスの少ない優れた信号伝送性能を達成した。
[従来研究との新規性]
ミリ波帯チプレット接続への3Dステッチアプローチ: これまで主にデジタル回路(CPUやメモリ等)の分野で検討されていたステッチチップやシリコンブリッジの概念を、高周波(24–40 GHz)のミリ波フロントエンド回路に初めて本格適用し、実用的な電気特性を実証した点。
10 dBを超える反射改善: ミリ波帯の実装において致命的だった「接続界面でのインピーダンスの狂い(反射)」を、3DSCの緻密な構造設計により、従来のワイヤボンドに対して約11 dB近くも一挙にシャープに抑え込んだ点。
※なお、翻訳・要約にはGeminiアプリを活用した。